【国試にチャレンジ!】細菌感染の鑑別(110D22)

医進ゼミの石戸です。

先日、グラム染色についての記事を書きました。
まだご覧頂いていない人は、どこよりもわかりやすい超大作なので、
ぜひご覧ください(笑)

ところで、グラム染色についての記事は書いたものの
医大生の中には、

グラム染色の細菌分類ができて役に立つの?

と思われる方もいらっしゃると思います。
少なくとも医大生の私(石戸)はそう思っていました(笑)

本日は、グラム染色の細菌分類を覚えておくことで
実際の医師国家試験を解くことができるという実例を挙げたいと思います。

過去の私のように、「グラム染色なんて別に大事ではないでしょ」と思っている方に
グラム染色の重要性を分かって頂けたら大変嬉しく思います。

また、「まだ医師国家試験の問題なんて見たことない」という
低学年の学生さんの参考にもなれば嬉しいです。

(医師国家試験)第110回D22番の問題

さぁ、それでは、早速医師国家試験の問題を解いていきましょう。
本日の問題は第110回医師国家試験のD 22番の問題です。

まずは、チャレンジしてみてください。

76歳の男性。発熱を主訴に来院した。10年前から慢性閉塞性肺疾患のため抗コリン薬とβ2刺激薬とを吸入している。喫煙は20本/日を46年間。3日前から発熱、咳嗽および膿性痰が出現したため受診した。意識は清明。体温38.5℃。脈拍108/分、整。血圧102/62mmHg。呼吸数24/分。両側の胸部に軽度のwheezesを聴取する。白血球8,200(桿状核好中球4%、分葉核好中球84%、単球2%、リンパ球10%)。CRP 7.3mg/dL。胸部エックス線写真(A)と喀痰のGram染色標本(B)とを別に示す。
原因菌はどれか。
a 腸球菌 b 肺炎球菌 c 化膿連鎖球菌 d 黄色ブドウ球菌 e Moraxella catarrhalis

(A)

(B)

いかがでしょうか?
正解は、eの「Moraxella catarrhalis」です。

この問題、病歴が色々書いていますけど、選択肢と染色標本で解けます。

思い出して下さい。

グラム陽性と陰性は色で分けているんでしたね。
紫色に染まれば「陽性」、赤色に染まれば「陰性」です。

今回は、赤色に染まっているので、「陰性」ですね。

また、形で「球菌」「桿菌」に分かれるんでしたね。
球形であれば「球菌」、四角形であれば「桿菌」です。

今回は丸い球形をしているので、「球菌」ですよね。
つまり、グラム陰性球菌を選べばよいということになります。

グラム陰性球菌は、3つだけでしたね。
「モラクセラ」「淋菌」「髄膜炎菌」でした。

こちらについては、先日の記事でゴロを紹介しているので、
まだご覧頂いておらず、覚えていない方は、先日の記事をぜひご覧ください。

選択肢を見ると、
eのモラクセラがグラム陰性球菌
aからdの菌は、「球」がついているのでグラム陽性球菌です。

したがって、病歴を見ずとも正解がeと決まります。

ちなみにAの画像初見からはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)であることがわかり、
そこから、今回の症例では急性増悪を起こしていることが考えられます。
しかし、何度も言いますが、グラム染色だけで答えが出せます

抗菌薬の使い方を考える時にもグラム染色は役に立つ

グラム染色の細菌分類はどうやら大事そうだと思って頂けたでしょうか?

ちなみに、このようにダイレクトに細菌を特定するのに役立つだけでなく、
抗菌薬を考える上でもグラム染色の分類は役立ちます。

思い出してください。
グラム陽性と陰性は何の違いによって色が分かれるんだったでしょうか?

それは、層の厚さの違いでしたね。

グラム陽性菌は一層の厚い層からなり、グラム陰性菌は薄い多層の膜で覆われているんでした。

この一層の厚い層は「ペプチドグリカン」という構造を取っています。
このペプチドグリカンを攻撃する抗菌薬、つまり細胞壁を攻撃する抗菌薬
ペニシリン系・セフェム系の抗菌薬です。

したがって、グラム陽性菌、特にグラム陽性球菌には、
上記の細胞壁を攻撃するペニシリン系・セフェム系の薬剤が効果的です。

こう考えたら、1つずつの細菌で抗菌薬を覚えなくて良いですよね。

このように、グラム染色の細菌分類は抗菌薬の選択にも役立ちます。
応用が効くので、グラム染色の分類をしっかりできるようにして頂ければと思います。
まだ覚えていないという方は、ぜひ覚えて頂ければと思います。

本日もご覧下さりありがとうございました。

(追伸)
本当に大切な内容なので、「まだグラム染色の記事を読んでいない」という方や
「読んだけど、内容を忘れてしまった」という方は、ぜひご覧ください。

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